2019.07.31

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ブランディングとネーミングの関係とは?


ブランドとは顧客に対する企業や商品、サービスなどへの良いイメージの蓄積です。

しかし、顧客の頭の中につくられるブランドのイメージ(の蓄積)は実際に目に見えるものではなく、もちろん触れることもできないものです。

そこで、そのブランドの顔として、何よりも先に機能するのがネーミングとブランドロゴです。

今回はブランディングとネーミングについて解説していきます。

 

 

■ 1 良いネーミングとは?

ネーミングと聞いて、皆さんがパッと思いつくものにはどんなものがありますか?amazon、楽天、ソフトバンク、セブンイレブン、マクドナルド、ユニクロなどなど、挙げればキリがないほどのネーミングが思い浮かんでくると思います。

ネーミングとはブランドの名前であり、顔である以上、まずはその唯一無二の独自性が求められます。なぜならネーミングは競合他社やライバル商品・サービスとの明確な差別化を表すのに、もっとも有効かつ重要な要素だからです。

先ほど挙げたようなネーミングはすでに誰もが知るような、メジャーブランドになっていますが、例えばこれから世の中にデビューを控えた商品や、まだ誰も知らない企業や事業、サービスのブランドとなると、ネーミングの価値や重要度はさらに増してきます。

独自性を表すだけでなく、ターゲットの誰にでも覚えやすく、思い出しやすい、キャッチーなものであることが求められるからです。

 

■ 2 ブランディング的に見た良いネーミングとは?

さらにブランディング(ブランドが長く、多くの人に愛される仕組みづくり)の観点からすると、もう一つ重要な要素が加わってきます。

それが、ブランドの一切を一気通貫する行動原理(=コンセプト)や価値基準(=バリュー)、目指すべき未来の理想像(=vision)を、ネーミングにまとわせることです。

コンセプトやバリュー、ビジョンに関して詳しくは「ビジョン、ミッション、バリュー、コンセプト・・・。これからの理念経営のやり方 Part1. 徹底解説篇」をご覧いただければと思います。

ネーミングはブランドとともに一生涯を歩んでいくものです。そして、ブランド自身と関わる人々の進むべき道を指し示す旗印であることが望まれます。

ネーミングにこれらの理念型言葉や意味合いをまとわせることで、ブランドの看板としての意味だけでなく、ブランドの存在意義やストーリーを語らせることができるのです。

一方、特徴を単に表現した、覚えやすく、言いやすい、上っ面だけの表現(=名前)にしてしまえば、ネーミングが本来持つ機能は半減してしまいます。

 

■ 3 ネーミングにマーケットインの発想を

ココカラでお手伝いする表現戦略やクリエイティブの中では、ネーミングの開発を依頼されることも多々あります。

まずはブランドにまつわる様々なことをヒアリングすることからスタートするのですが、ココカラのネーミング開発で大切にしているのが、マーケットインの発想、つまり“ブランドが何をしてくれるのか?”という顧客との関係性をできる限り表現することと、ブランドが将来どう在りたいのかを示すことです。

ブランド自身を端的に表現したネーミングであることはもちろん、そのベネフィットやステークホルダーとの未来像を少しでも連想しやすいネーミングを目指します。

こうしてネーミングでブランドのコンセプトやビジョンを語らせることで、そのアイデンティティはより立体的に、より鋭く発信されていきます。

ターゲットにとってはブランドも人間と同様、何を考え、どう行動し、どこを目指すのか?がわかりやすい方が好かれやすいものです。皆さんも、何を考えているかわからないような人より、わかりやすく、嘘偽りのなさそうな人の方が好感を抱きますよね?

ブランドに対してもそれは同じです。表面上だけのブランドイメージには、共感はもとより、愛着を感じたり、熱狂することはできません。モノやコトが溢れまくっている現代においてはなおさらで、顧客も想像以上にシビアにブランドをジャッジし、その本質を容易に見抜いているのです。

 

■ 4 現代のブランディングにこそネーミングが重要!

このように、あらゆるモノが均質化され、独自性や明確な優位性が見出しづらくなっている現代のマーケットにおいて、ブランドがそのネーミングを通して語りかけるストーリーは、ブランディングという顧客に愛され続ける仕組みづくりにおいても非常に有利に働き、大きな差別化ポイントとなり得ます。

顧客へのイメージ戦略や記憶のマネージメントは何よりもまずネーミングに始まります。そしてその後に続くあらゆるコミュニケーションにおいてもネーミングは常に傍らでブランドをブランドたらしめ、顧客との約束ともいうべき保証書代わりになっていくのです。

 

■ 5 ブランディング的に優れたネーミングの例

ネーミング=企業や商品、サービスの特徴のシンボルだけではない、理念や価値観を表現したネーミングの具体例を見ていきましょう。

各ネーミングはどれも、ブランドの発展や活性化、顧客へのコミットなど、単なるネーミング=名前にとらわれない機能を果たしています。ブランディングの観点から見てもとても優れた現代的なネーミングだと思います。

 

[5]-1 「リタリコ」

 

画像出典:http://litalico.co.jp

「障害のない社会をつくる」というビジョンを掲げ、社会の課題と向き合いながら就労支援やスキル開発などの幅広いサービスを展開している「株式会社LITALICO」。

そのネーミングは日本語の「利他」と「利己」に由来します。

「LITALICO」は日本語の利他と利己を組み合わせた造語です。
これは当社の創業から変わらない価値観であり、
当社の理念「世界を変え(利他)」「社員を幸せに(利己)」の
両方を実現するという意思から生まれたものです。
〜株式会社LITALICO  HPより〜

まさに理念をそのまま企業名とし、社内外へとその想いを発信するビジョナリー・ネーミングの代表だと言えますね。

現在LITALICOは「LITALICOワークス」をはじめとした様々なサービスを展開して成長を続けていますが、雇用課題や教育課題を中心にした取り組みはすべてビジョンにのっとったものであり、社名は単なる名前という役割を超えて、自身の進むべき未来を具体的に指し示し、行動指針そのものとなっています。

この先も、LITALICOが「LITALICO」という社名である限り、そして社会に少しでも障害が存在する限り、世界を変え、人を幸せにする彼らの挑戦は続いていくのだと思います。

 

[5]-2 「マザーハウス」

画像出典:https://www.mother-house.jp

皆さんは「マザーハウス」のバッグをご存知でしょうか?シンプルですがどこか温かみのある、上質なバッグの数々。マザーハウス はバングラディシュやネパールなどの現地の素材を使い、現地の人々の手によって作られたバッグなどを世界中に販売している企業です。

マザーハウスの理念は「途上国から世界に通用するブランドをつくる。」非常にシンプルで明解、パワーのある言葉ですね。

そして、おそらくコンセプトとして掲げられているのが「その国にあった素材、生産方法を最大限尊重したモノづくりを行います。」「働くみんなにとって『第二の家』のように感じられる環境づくりを目指しています。」の2つ。こちらもコンセプト=自ら(自社)の行動原理(大切にすること)が非常にわかりやすく規定されています。

これらの企業としての意志を含み込み、屋号・象徴として短く表現されたものが「マザーハウス」というネーミングです。

その由来は、創業者であり代表兼チーフデザイナーの山口氏が大学院生時代に何となくぼんやりとマザーテレサの活動などを尊敬していたことと、工場のみんなにとっても家みたいなブランドになりたいという想いから。この2つを合わせてマザーハウスと名付けられました。

2006年から始まったマザーハウスの挑戦はその過程で成功と挫折を繰り返しながらも、一歩一歩着実にその夢を叶えています。

その一因はとにかく明快でわかりやすく、想いのこもった理念とコンセプト、そしてその象徴として在るネーミングであることは間違いありません。

特にマザーハウスの場合は、日本国内のみならず国外にも多くのスタッフを抱えています。国籍や文化の違いを超えてもなお、ブランドの旗印となり、行動指針としてブレなく深く浸透しているのは本当にすごいことです。

 

[5]-3 「HOKA ONE ONE」

 

 

画像出典:https://www.hokaoneone.jp

このブランド、「ホカオネオネ」と読みます。最近のランニングシューズではニュースタンダードとなりつつある、厚底ソールのはしりとなった山岳マラソン(トレイルランニング)がルーツのシューズメーカーです。

独特で、良い意味で馴染みのない、違和感あるこのネーミングは当然日本語ではありません。それではいったいどこの国の言葉でしょうか?

正解はニュージーランドのマオリ族の言葉です。HOKA ONE ONEの創設者ジャン・リュック・ディアードとニコラ・マーモッドがこの地で新たなシューズの本質とひらめきを得たことに由来します。

HOKA ONE ONEは「Time to Fly(さぁ、飛ぼう!)」という意味です。ランニングシューズなのに、走るではなく飛ぶ??そう思うかもしれませんが、そこには創設者のシューズづくりに込めた深い思いがあります。

世間にありふれたランニングシューズの中で、HOKA ONE ONEのランニングシューズの本質は、商品を通じてあらゆるランナーが抱える悩みから解放すること。どんなランナーでも、どんな路面でも、どんなスピードでも対応できる、それはまるで空を飛んでいるかのような感覚を目指してランニングの進化を追求していく。

まさにHOKA ONE ONEが目指すランニングシューズの理想形が、そのまま社名として表現されているんですね。

開発当初はランニングシューズ界から非常識と嘲笑された特徴的なデザインも、現代では数多くのランナーに選ばれる最先端のテクノロジーと評価され、私が思うにあのNIKEでさえも一目置いているように感じます。(あくまで私見ではありますが…)

名は体を表すように、革新的なシューズづくりを続けるHOKA ONE ONEの、さらなるぶっ飛んだシューズ開発とその進化に、ランを愛する1ファンとして大いに期待したいと思います。

 

■ 6 まとめ

ブランディング的な観点から見たグッドネーミング例を紹介しましたがいかがでしたか?字面や語感だけでなく、その由来も知ってみると、さらに腹落ちするものばかりですよね。

特にブランドとして愛され続けるためには、ネーミングから少しでもビジョンやコンセプトなどの想い・ストーリーが滲んでくることが重要です。

繰り返しになりますが、あらゆるモノが均質化された現代のマーケットにおいて、ブランドがそのネーミングを通して語りかけるストーリーは、ブランディングという顧客に愛され続ける仕組みづくりにおいても非常に有利に働きます。

ポイントはブランドの特徴を独りよがりに語るプロダクトアウト型のネーミングではなく、顧客と共感・共生、共創のストーリーを語るマーケットイン型のネーミングであることです。

企業や商品、サービスなど、みなさんのお気に入りのブランドや身の回りにあるブランドのネーミングはどうでしょうか?ネーミングとブランディングを意識して、少し見回してみるのも新鮮で面白いと思いますよ。

それでは今回はこの辺で、また次回!