2018.06.29

| Branding

ブランドづくりの意味とは?基本の基本を徹底解説。


こんにちは!今回は「ブランド」について、その基本中の基本をとにかくわかりやすく、徹底解説していきたいと思います。

「ブランド」といわれて、あなたはどんなものをイメージしますか?ルイ・ヴィトン?シャネル?ポルシェ?
これらはもちろんブランドです。でも、私たちの日常生活に身近にあるユニクロや無印だって、ブランドです。
「ブランド」って何となくわかっているけど、なんだかもやっとしていませんか?
さらに「ブランディング」といわれたら、ますますもやっとしませんか?

これから、自社のブランドを確立させたいとお考えのあなた、まずは、そのもやっとを5分で晴らしましょう。

■ 1 「ブランド」の意味とは?

1-1 あなたは言える?「ブランド」って何?「ブランディング」って何?



あらためて、質問です! 「“ブランド”とは何か、簡単に説明してください。」

こう言われて、すぐに答えられますか?

わかっているようなつもりになっているけど、実際に答えようとすると難しくないですか?少し前まで、私も難しかったです……。
ブランドをつくろうとしている方が、まず「ブランド」をちゃんと説明できなければ「ブランド」はつくれない。ですよね?
ここでは「ブランド」についてどこよりも簡単に解説していきたいと思います。

「ブランド」を説明しようとして難しいのは、形がないものだから。人によってもブランドでイメージされるものの認識が違ったりしますし。(←そう、ここがくせ者でもありポイント!)
「ブランド」の意味は各所で定義されているけど、ここではわかりやすく忘れないように、一旦思い切って乱暴に定義してみたいと思います。

ブランド=恋愛関係づくり!

え?何を言ってるの?とお思いのみなさん、もうちょっとお付き合いください。

ブランドとは恋愛、つまり、その人(顧客)が商品を好きになっている状態のこと。商品を好きになって、その人(顧客)の価値になっていること。
その人(顧客)に、「好きだなぁ」「なんかいいな」と思ってもらえること。そして、いつも頭の片隅にあって、何かのきっかけで思い起こされるものであること。
これって、恋愛に似ていますよね?もはや軽い恋愛状態ですよね?

例えば、靴といって「ルブタン」が思い出される人もいれば、「ナイキ」を思い起こす人もいる。「○○というカテゴリーの中で思い出される存在」になることが、ブランドです。「好きだなぁ」「いいなぁ」と思える体験を経て、その人の価値になっていくことが大切です。

その「好き」を、どうやってつくるか。
それが「ブランドづくり」であり、「ブランドづくり」とはいわゆる「ブランディング」というわけ
です。



1-2「ブランド」のそもそもの意味はこれだ!



「ブランド」について、ほんの少し腑に落ちてきたでしょうか。
そもそも、ブランド(brand)とは、牛の焼き印(brand)を語源としています。牛飼いが自分の牛と他の牛を区別するためにつけた焼き印のことです。

焼き印は、いってみればただのマークです。
ブランドの名前やロゴといった「マーク」はブランドの核であり、ブランドを思い起こさせるのにとても大事ですが、ブランド=マークではありません。


だから、「“ブランド”をつくるには、ロゴと名前をつくろう!あとはセンスのいいパッケージをつくればいいんだ!」
というのはちょっと早計なんです。

あくまでブランドづくりは、お客様の「好き」をつくること。お客様から好きになってもらうこと。

例えば恋愛では、その人の名前も容姿も好きになるのには大きな要素かもしれませんが、それでは一目惚れで終わってしまい、通り過ぎて10分も経ったら忘れられてしまうかもしれません。
「その人らしさ」を十分に理解した状態であること。他の誰でもなく、その人だから。その人だから好き、という状態にします。

そこには、必ず好きな人との接点、関わりがあります。ブランドでいえば、そのものを実際に使ったときの感覚だったり、お店での体験だったり、CMのイメージだったり…多岐にわたります。それらのいろんな体験とイメージが折り重なって、その人らしさを頭の中に理解し、「好き」が生まれます。
これが、ブランドづくりです。

そう、「ブランドづくり」は“○○らしさ“をつくることといわれたりもします。

では、らしさをつくったブランドを、取り上げてみましょう。


■ 2 事例から学ぶ、成功する「ブランド」


2-1 ルイ・ヴィトン


ブランドと聞いて思い浮かべるブランドの筆頭に挙げられるのが「ルイ・ヴィトン」だといいます(消費者1,000人調査※)。まさに、THE ブランド!

その本来の品位が危ぶまれるくらい街にあふれていますが、そもそもルイ・ヴィトンは由緒正しき高級ブランド。私は、ブランドの中のブランドといってもいいくらいの洗練されたものだと思っています。

19世紀、旅行用の荷造りトランクを専門に扱う店として創立した「ルイ・ヴィトン」。
馬車や船といった手荒な移動手段が主だった当時、鞄は丸いフォルムが主流でした。鞄職人ルイ・ヴィトン青年は、今後鉄道や船舶が主な移動手段になるといち早く予見し、頑強で平積みできる四角いトランク、さらには船での移動を考えて水に沈まないようにつくりました。
かの有名な豪華客船タイタニックでも、ルイ・ヴィトンのトランクだけは沈まず、それに捕まった人は生き残ったという逸話が残るほど!
先進性と、品質。これがルイ・ヴィトンというブランドのゆるがない屋台骨です。
現在ももちろん、一つひとつ職人の手で丁寧につくられています。

さらに現LVMH(ルイ・ヴィトンをはじめ有名ブランドを傘下においたコングロマリット企業)会長のベルナール・アルノーにゆだねられ、アパレル業界の常識を覆すブランド戦略が行われ、今に至ります。
強烈なブランド戦略とは、セールをしない、セカンドラインをもたない、TVCMをしない、ニーズの調査をしない…等々ナイナイずくし。
例えばTVCMも、前後に来るCMを選べないのでイメージのコントロールができないという理由で流しません。そして、商品開発ではよく取り入れられるはずの顧客のニーズ調査も、ルイ・ヴィトンでは一切しません。
「ラグジュアリー業界ではクリエイションの場であり、数学や統計の分析だけでは図ることのできない世界なのだ」とし、自社の最大の強みを「新しいものを創造しつづける底力」と明言しています。
奇才・草間弥生や現代美術家村上隆など、近年のアーティストコラボレーションも印象的です。これも、独自のブランド戦略によるもの。

ルイ・ヴィトンというと、LVのモノグラム模様のバッグに代表されるように堅実で安定感のある不動のブランドというイメージもありますが、実はその裏では常識を覆し続けているブランドでもあるのです。守るところは守りつつ常識を覆し続けているからこそ、今も支持されているというわけです。

ちなみに、店頭には百貨店からの派遣要員は用いず、すべて自社の社員が接客するというくらい徹底しています。社員研修では、頭のてっぺんから爪の先、そして振る舞い全てに、毎日常に「洗練されているか?」を問われるそうです。ルイ・ヴィトンのブランド管理は、なんと社員の爪にまで至るのです。

※引用元:岩崎邦彦著『ブランドづくりの教科書』より

Point!

ルイ・ヴィトンから学ぶことは、強いブランドのためには《常識を覆し続ける》こと。



2-2無印良品


「LV」を高らかに掲げるルイ・ヴィトンがTHE ブランドなら、それに対抗する存在ともいえるのが「無印良品」です。「“無”印良品」。派手な印(マーク)はないけれど、モノは良質である。それを体現するブランド名だと思います。
適正価格で、シンプルで過不足のない機能。使う人にとって「ちょうどいい」、そんなミニマルな設計だからデザインも無駄がなく美しい。主張しすぎないデザインは、家電でも家具でもファッションでも、他のブランドとも合わせやすいですよね。

「無印良品がいいんだ!」という一部の強烈なファンでつくられているブランドではなく、広く浅く多くの顧客の中に「無印に行けばなんかあるだろう」という信頼をうまくつくり出しているブランドだと思います。
この広く浅く信頼を形成するブランド設計は、日本のみならず世界でも支持され今や27カ国、全世界で928店舗(2018年2月)。アイルランドやUAE、サウジアラビアなど、そんなところにまで受け入れられてるの!?といった国まで。取り扱う品は、50円の消しゴムから2000万円以上する家まで、ジャンルもバラバラな7000点以上。驚きなのは、生活するのに必要なものはすべて無印良品で揃ってしまうという!こんなブランド、他にありません。もともとはSEIYUのプライベートブランド、たった40品目から始まった無印良品。そう考えると、すごくないですか?
こんなにも多種多様な商品を扱っているのに、なぜそのどれもが「無印良品」でいられるのか?そして、世界中で支持を得られたのか?
そこには、秀逸すぎる「コンセプト」が存在
しています。

無印良品の「コンセプト」は「これでいい」です。
実は無印良品として「コンセプト」は明らかにされていませんが、それがわかる言葉が無印良品のホームページビジョンの中にあります。その一部を抜粋します。

これでいい。
たった一文字に込めたコンセプトの力が、現在の万人に受け入れられるゆるぎのない「無印良品」のブランドをつくっているのです。

Point!

無印良品から学ぶことは、《コンセプト》へのこだわりです!


2-3 アップル


米雑誌フォーブスが毎年発表している「世界で最も価値のあるブランド」ランキング。それに最新の2017年まで7年連続でトップになったのが「アップル」です。過去3年の売上高と各ブランドがそれぞれの業界で果たす役割に基づいた割合を総合してブランド価値を算出、2017年で約1700億ドル(約18兆5000万円)に達しているそう。

アップルといえば、革新的な機能に息をのむようなミニマルなデザイン。カリスマCEOのカリスマスピーチ。そして、新製品を出すたびに行列をつくる熱狂的な信者たち。アップルには他のブランドにはない、大衆を煽動するかのような宗教的な存在感さえありますよね。
近年では、iphoneなど他社製品と類似する機能も指摘され、かつての圧倒的なブランド力が少し弱まっているようなところも指摘されていますが、でも、確実にアップルは世の中の価値観を変えて来たブランドです。

様々な彩りで踊る、初代imacの登場はセンセーショナルでした。当時最先端の機能を有したオールインワンパソコンでありながら、丸いフォルムとカラーバリエーションでファッショナブル且つキュートなお姿を世間にお披露目。それまで職業人のためだったパソコンが、一気に大衆のためのパソコンになったのです。

「電話を再発明する」と表明し、2007年それを実現したiphone。電話やメールはもちろん、音楽も聴けるし、写真も撮れるし、インターネットもできる。さらにApp Storeからダウンロードしたアプリでありとあらゆることができる。手の平サイズのしゃべれるパソコンのできあがりです。それまでの携帯電話から、「スマートフォン」という新しい概念が生まれました。

ここまで世の中を変えたブランドはあったでしょうか。
かつて、スティーブ・ジョブスはこのように明言しています。
「我々が一番得意とするのは、優れたエクスペリエンスを提供することだ。」

たんにモノではなく、その先を見ているブランド。人々を感動するような体験をつくり出すことを目標にしているから、イノベーションを起こし続け、それに実際に感動した人々が熱狂的なファンとなっていくのです。

Point!

アップルから学ぶことは、2つ!
1、 新しい価値観をつくり出すこと
2、 人々の「感動」をつくり出すこと


2-4もっとも安い!?98円で手に入れるブランド


なんだかすごい規模の話が続いたので、最後はホッと一息。スーパーで98円から買えるブランドのお話を。
男前豆腐店。「風に吹かれて波乗りジョニー」やら「特濃ケンちゃん」やら、豆腐のコーナーで、よく見かけませんか?ちょっと変わったネーミング&パッケージのお豆腐を。いろいろなラインの商品が出ていますが、「特濃ケンちゃん」は他のメーカーのお豆腐と比べても全く高くなく、近所のスーパーでは98円で売られていました。

一時は話題も下火になり売り上げが落ち込んだこともあったようですが、男前豆腐店の商品は2003年の登場以来、ずっと陳列棚にあり続けています。陳列棚に並び続けるというのは並大抵のことでありません。

このブランドづくりの妙は、ポジショニングの妙だと思っています。豆腐という大企業が参入していない場所で、さらに豆腐といういかにも日常的で実用的なもの存在に、まったく実用的でない「男前」という叙情性をもたせたギャップ。もちろん、この男前シリーズは食べても美味しく、はじめは「ちょっと変わってるけど、おいしい豆腐がある」という口コミで広がったようなもの。変わったパッケージやネーミングばかり話題にされがちですが、この社長さんは二代目豆腐屋さんで、どこよりも美味しい豆腐を作るという意気込みのもとものすごく豆腐を研究しつくした方でもあります。美味しい自慢の豆腐を買ってもらうための策として、ポジショニングの妙を使ったわけですね。

Point!

男前豆腐店から学ぶことは、《ポジショニングの大切さ》です!

■ 3 ブランド激戦時代。「ブランド」のあり方も変化している

さてモノや情報があふれかえる今、ブランドはどう闘えばいいのでしょうか。
悲しいことにブランドがその名の通り「マーク」だけで良かった時代、マス広告を使って「認知」をすればモノを売れた時代はとっくの昔に終わってしまいました。大変な時代ですね。

ここで一旦マーケティングの父、フィリップ・コトラー氏の最新経営論「マーケティング4.0」の力を借りてどんな時代を整理してみましょう。


製品中心主義の1.0、顧客志向の2.0、価値主導の3.0、そして注目の4.0のキーワードは自己実現だといいます。これは一体どういうことなのでしょう?
簡単に解説していきましょう。

1.0は、言ってみればモノがなかった時代。自分たちが良いと思ったものを作り、それをどう売るかを考えることが目的でした。つまり、「認知」がカギでした。

2.0は、経済成長を遂げてモノも行き渡りIT技術が発達してきた頃のこと。顧客は簡単にネットで情報を比較できるようになりました。マーケティングのポイントは、顧客のニーズを探り、求められている商品やサービスを提供すること。他社と差別化することが求められるようになりました。

3.0は商品の品質や顧客満足はもちろん、それをつくる企業や商品のビジョンまで求められるようになりました。商品や顧客ということを越えて、「人間」全体にフィーチャーし、社会をよりよい場所にするためのビジョンを持てというものです。そのように作られた商品や企業を支持することで、顧客に表面的ではない、深い満足を提供するというもの。

そして、4.0はズバリ「顧客の自己実現を支援したり、促進したりするような商品やサービスを開発すること」!
コトラーは、4.0の考え方を語るにあたり、心理学者アブラハム・マズローの「欲求5段階説」をモデルにしているといいます。
「欲求5段階説」は人間の欲求を5段階で表現していて、「生理的欲求」→「安全の欲求」→「社会的欲求」→「承認の欲求」ときて、最後「自己実現の欲求」となります。
社会も熟成され、ついにこの「自己実現」に価値を置く世界を目指すようになってきているというわけです。
みんなが幸せ、社会が幸せ、自分も幸せ。つまり、人がみな幸せな社会です。これが実現したら、とてもいい世の中になりそうですね。
ただ現状、コトラー自身日本はマーケティングが遅れている企業が多すぎると指摘しています。3.0に行っている企業は稀、大体が2.0にとどまっていると言ってもいいのではないでしょうか。

でも実際に「自己実現」といわれたって、具体的にどうしたらいいのか分かりにくいですよね。
4.0でコトラーが語っている究極の目標は、「顧客を感動させて忠実な推奨者にすること」。
なるほど。前述のアップルなんかはそれを実現していると思います。だから、熱狂的な信者までを獲得しているんですね。

そのブランドが「自己実現」まで関わるには、一つには個別の「驚き」や「感動」体験があると私は考えています。
例えば豆腐で自己実現というのは難しそうです(不可能とは言わないですが)。でも、「驚き」や「感動」を提供することはできます。


ここでちょっと私の個人的な体験になるのですが……。
以前アップルの「one to one」というサービスを利用していて、このサービスに感動してしまった経験があります。これは、お店またはオンラインでアップル製品を買った人だけが購入できるアップル製品関連の1対1のトレーニングプログラムです(現在は終了)。年間9,800円で回数無制限というからスゴイ。
ド素人の状態からInDesignという編集デザインアプリでフリーペーパーをつくる、というミッションが生まれ、途方にくれた私はアップルに駆け込んで相談したのです。アップル以外のアプリに関するセッションは本来ならやっていない(InDesignはアドビのアプリ)のですが、そのフリーペーパーの完成まで特別に…ということでやってくれたのです。
1対1の相手となる先生は、たしか美容院のように指名でき、私は最初にやさしく対応してくれたお姉さんをいつも指名していました。
インデザイン作業中に困ると急いで予約を入れ、教わり、また困ると予約を入れ…で、這々の体でなんとかフリーペーパーは完成。
いろいろ詳しいそのお姉さんはまるで友達のように、親しみやすく、ただ喋ることも楽しみになっていた私。
苦しい状況に笑顔で助けの手を差しのべてくれるのですから、これはもう、お姉さんのことを好きにならざるを得ません。そしてもちろんアップルも好き、な状態です。
アップルは「One to one」はじめ、製品が故障したときに駆け込こんでも無料で1対1で対応してくれる「Genius Bar」など、本当にサポートが手厚い。それに対応してくれる人がいい。きちんとした格好の人がマニュアルを元になんとなく対応してくれるよくある顧客対応ではなく、Tシャツ姿のメカに強いお姉さんやお兄さんがまるで友達のような親しみやすさで困りごとに親切に助けてくれるんです。
これらの体験からもともとメカに弱い私は、もうパソコンと言えばアップル以外の選択肢はなくなっている状態です。たぶん、死ぬまで私はアップルです。
これがまさにブランドが「自己実現」を助けるということなのではないでしょうか。

冒頭で、「ブランドとは好きになってもらうこと」とお話ししたけれど、この好きの程度もいろいろあって、「なんか好き」「これでなきゃ絶対にダメだ!生きていけない」というような状態までホントにいろいろな好きがあるわけです。でも、このどの段階にあっても、それはちゃんとブランドなのです。マーケティング4.0まで到達できたら、この好きの度合いが深まるのだと思いまではないかと思っています。

Point!

コトラーから学ぶマーケティングの究極の目標とは、
《顧客を感動させて忠実な推奨者にすること》。
まずは簡単に《ブランドづくり=感動づくり》と心得えましょう!

■ 4 今求められる「ブランド」の3つの大事なポイント

今までの話をふまえて、今求められるブランドの大事なポイントを3つにまとめてみましょう。つくろうとしている新規ブランド、もしくはリブランディング商品、この3つを叶えていけそうですか?

 1 非常識になること
 2 一言で言えること
 3 驚きや感動があること


「非常識になること」

非常識というと少し誤解が生まれるかもしれませんが、これまでの常識を覆すような商品かどうか、をチェックしてみてください。つまり、その世界の一番になれているかどうか?ルイ・ヴィトン青年が、このまでの定番だった丸形から四角い箱型のトランクをつくったように常識を覆すものであるかどうか。アップルのように世界を変えるくらいの新しい概念をつくるものであるか? でも、何もそんなたいそうなことでなくてもいいのです。
男前豆腐店のようにこれまでの常識からほんの少し目線を変えて、新しい場所をポジショニングすればいいのです。


「一言で言えること」

そして、これが本当に大事です。そのブランドを一言で説明できますか?ブなるべく短い言葉で、バシッと一言。つまり、ブランドコンセプトです。
とても分かりやすい例でいうと、ダイソンの「吸引力の落ちないただ一つの掃除機」ですね。これはこの短いコンセプトの中に「非常識(その世界のいちばん!)」の要素が入っていてかなり強いです。アスクルは「事務用品が明日届く」、スターバックスは「家庭でもなく職場でもない第三の空間」。どれも短い一言の中に、他社との差別化もできていてすばらしいコンセプトだと言えます。
そして、無印良品のビジョンで表現された「これでいい」のように、一文字にまでこだわって考え抜くと本当につよいブランドになります。


「驚きや感動があること」

商品そのものに驚きや感動があること。または顧客と商品やサービスのやりとりで生まれる体験の中で驚きや感動があること。それらの体験が、顧客の「好き」をつくり、ブランド化させることにつながっていきます。
もう一度思い出してください。ブランドづくりと恋愛は似ているということを!驚きや感動など心を揺さぶられるような体験があって、「好き」は形作られます。そして「好き」という状態は、その人(商品)がいいという状態、いつも頭の片隅にある状態です。強烈に「好き!」でもいいし、「なんかいいな」でもいいし、その好きの程度はどの段階でも構いません。何度か使ったけど名前を思い出せない、という状態ではありません。個別の体験とともに、その商品の名前もしっかり長期記憶にしまわれて、いざというチョイスのタイミングで必ずその名前が挙がることです。これがブランドになった、ということです。アップルのように顧客に「感動体験」を提供できているか?ブランドづくりの際には、確認してみてください。

5 まずはここから。ブランドづくり事始め

ここまで簡単にブランドづくりをお話ししてきましたが、最初に確認してほしいことがあります。そのブランドに一生情熱を注ぎ続けられるものか。そのくらい情熱をもって向き合えないとブランドづくりはうまくいかないと考えています。確かなブランドをつくるのは、やっぱり一朝一夕ではいきませんから。
今日本でもっとも勢いのあるリーダーのひとり、ZOZOTOWNの代表・前澤友作氏。週3回しか会社に行かないことでも有名で、そのスバ抜けた資産と優雅な出社スタイルにはもう垂涎の的ですが、実は彼はこのように語っています。「会社に行くのが週3回なだけで、会社にいないときもいつも会社のことを考えている。寝ているときも会社のことを考えている」と。
つくりたいと思ったブランドは、あなたの情熱を注ぎ続けられるものか?もう一度こちらのクエッションを。

さあ、荒野に旗を立てましょう。

ブランドづくりまとめ

最後に今回のまとめです。 ブランドとは恋愛です。
つまり、その人(顧客)に商品を好きになってもらうことです。
顧客との恋愛関係づくりですね。

容姿(デザイン)や名前(ネーミング)でいいなと思わせることも大事ですが、個別の体験も大事です。商品やサービスを使ってもらう中で体験することで「好き」という感覚を重ねてもらい、その存在を確固たるものにして長期記憶にしまわれること。いつも頭のどこかにあって、いざというときに思い浮かべてもらうこと。


さて、そのためには何をしたらいいのか、ブランドの賢人たちに学んだ3つのポイントがありましたね。

■非常識になること。

ルイ・ヴィトンからは、常識を覆し続けること。アップルからは世間を驚かせるような価値観をつくり出すこと。男前豆腐店からは、ポジショニングの大切さを学びましたね。これらをふまえて、非常識であるか(これまでの常識からジャンプしているか)をチェックしてみてください。

■一言でいえること。

無印良品からは、コンセプトの大事さを学びました。成功するブランドとは、一言でそのブランドの価値を伝えられるブランドです。わかりやすく、そして他と差別化できている「吸引力の落ちないただ一つの掃除機(ダイソン)」のようなコンセプトをつくってください。そのとき、「これ“で”いい」のように、一文字にまでこだわって考えてみてください。

■驚きや感動があること。

アップルからは、「感動」をつくることを学びましたね。商品そのものが感動を覚える商品であれば素晴らしいと思います。でもそうであってもなくても、商品と顧客との間で生まれる体験の中に「感動」があること。これが大切です。その「感動」が、強い「好き」を生み出すのですから。

人に対しての「好き」も、モノに対しての「好き」も「好き」という気持ちは、人を動かすエネルギーがありますね。だから、ブランドの作り手が、そのブランド自体を愛していることも大切な原動力なんです。
「好き」を大切にしてみてください。まずはあなたがハッピーに、まさに自己実現していけると思いますよ。



では、今回は以上です。