2019.04.05

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唯一無二のブランドコンセプトのつくり方 〜実践編〜


 

 

■ 1 ブランドコンセプトとは自己規定(ポジショニング)だけではありません

誰もが知る、有名な企業、商品、サービスには、どれもそのブランドならではのコンセプトが掲げられています。

 

「地球上で最もお客様を大切にできる企業であること」〜amazon〜

「誰もが情報を共有できる、オープンでつながりのある世界を実現する」〜Facebook〜

「Dropboxの使命は、世界中のユーザーの日常をシンプルにすることです。」〜Dropbox〜

「水と生きる」〜サントリー〜

「世界中をかっこよく、世界中に笑顔を。」〜スタートトゥデイ(ZOZOTOWNの運営会社)〜

「羽がない扇風機」〜ダイソン〜

「『これがいい』ではなく『これでいい』という理性的な満足感をお客さまに持っていただくこと。」〜無印良品〜

 

ブランドコンセプトとはただの自己規定(ポジショニング)ではありません。

ブランドコンセプトは自らのポジショニングを規定し、ブランドの力を一点に束ね、今〜将来の在り方を決め、行動を指示し、その価値を最大化します。そして「目標を達成するための原理・原則を短くコンパクトにまとめた言葉」です。

 

この辺りのことは「ビジネスを一気に加速させる!優れたブランドコンセプトの働きと作り方を解説!〜基本編〜」で詳しく解説していますので、興味のある方はこちらも併せてご覧ください。

 

 

[1]-1 ブランドコンセプトは企業規模や課題にかかわらず効果を発揮します

“ブランドコンセプトの重要さや必要性と言ったって、それは大企業や世界のどこを見渡しても、今までにはない画期的なブランドの話でしょう?”そう思う方もいるかもしれませんが、そんなことは全くありません!むしろその逆で、企業、商品、サービスの成功は、まずはブランドコンセプトによって左右されると言ってもいいでしょう。

 

また、ビジネスが逆風に直面し、低迷・停滞している場面でも、ブランドコンセプトは効力を発揮します。

 

例えば今では多くの「ピーカー」と呼ばれるアウトドアブランドの“スノーピーク”は1990年代、6期連続で売り上げが減少していました。その時に行動指針として社員の頭をよぎったのは「徹底的にユーザーの立場に立ったプロダクツやサービスを提供したい」というブランドコンセプトでした。

 

お客様(ユーザー)が今どんなプロダクツやサービスを求めているのか?思い悩み続けた社員は、いっそのこと、お客様と共に過ごし、楽しみ、アウトドア・ライフスタイルの中で理解しようと考えたのです。以来、1998年から“スノーピークウェイ”というアウトドアイベントを続けています。

 

このようにあらゆる場面で、ブランドを支え、進化させ、より強い顧客との絆を築いてくれるのが優れたブランドコンセプトです。今回はブランドのコンセプト作りを詳細に解説していきます。

 

■ 2 ブランドコンセプトをつくろう

ブランドコンセプトは、ブランドのすべてを貫き通す串にあたります。この串に当たるコンセプトが正しく、しっかり刺さっていないと、不安定で機能しない“コンセプトらしきもの”になってしまいます。

 

ブランドのすべてを貫き通す、というと漠然としていて、果てしない印象がありますが、大きくは3つ。「現在地」「資産」「戦略」を貫けばいいのです。

まずはこの3つをしっかりと把握し、その上ですべてを貫き通す串にあたるブランドコンセプトを考えていきます。

 

 

[2]-1 コンセプトは「現在地」「資産」「戦略」を貫く串である。まずはこの3つをしっかりと把握しよう!

「現在地」…あなたの事業や商品、サービスの現在地を把握します。把握は3段階でおこない、世界レベルでの動向、国内レベルでの動向、そしてあなたのブランドが属する業種分野での動向を見ていきます。

 

いま現在のブランドがいる場所は、成長著しい競合ひしめく市場なのか?はたまたまだ誰も切り開いていない未知で未開の市場なのか?

 

「現在地」の把握は、ブランドを取り巻くすべての外的な条件・要因を把握する作業だと言えます。

 

「資産」…資産の把握とは、あなたのビジネスで活用できるすべてのものを指します。設備や販売ネットワークなどのハード面や人材、スキル、ノウハウ、社風などのソフト面など、あらゆる資産を把握します。

 

この際、弱みと言える部分も把握していきます。なぜならば、強みと弱みは裏表の関係であり、あなたのブランドの強みは、実は弱みの裏側に隠れていることがあるのです。

 

例えば“乳酸菌を主成分とした食品を販売する架空メーカー”があるとします。弱みとして

◎他社のように画期的な新成分がない

◎代わり映えのない企業・商品イメージ

◎ターゲット層が曖昧

といったことがあるとします。

 

しかし、これらは裏を返せば、

◎他社のように画期的な新成分がない→乳酸菌ひとすじ00年

◎代わり映えのない企業・商品イメージ→誰にとってもブレないイメージ

◎ターゲット層が曖昧→世代を問わず受け入れられる

と言い換えることもできるはずです。これはもはやライバルにはない強みだと言えます。

 

もちろん、既存顧客も重要な資産です。できるならば顧客に直接ご意見や感想を聞いてみてください。顧客の数はただの数字ですが、その本心(インサイト)はライバルとの違いになり得る、貴重な資産となるはずです。

 

「戦略」…戦略に関しては、ブランドコンセプトが作られた後、最後に定めるものです。ブランドコンセプト作りとは少し違った話になるのでここでは割愛しますが、1つだけ。

 

良い戦略とは、最も困難な課題に真正面から取り組んでいるものです。

 

例えばRIZAPは“「人は変われる。」を証明する”というブランドコンセプトのもと、誰でも2ヶ月*で望んだ体に導くという戦略を続けています。

 

ダイエット経験のある方ならよくご存知かと思いますが、これは非常に困難極まりない話です(笑)だからこそ「結果にコミットする」というフレーズと共に多くのターゲットの胸を打ち、RIZAPならイケるかもというインサイトを湧かせ、大反響となっているのだと思います。

*各種コース/プログラムにより異なります。

 

 

[2]-2 コンセプトづくりのための土台となる資料をつくろう

「現在地」と「資産」を把握したら、これらをA4用紙3枚にまとめていきましょう。1枚目の資料は「現在地」シートです(以下図1)。ここに世界/日本/分野について把握した内容を書き込んでいきます。

 

「〜の世界」の部分は自分なりにしっくりくるキーワードを入れて表現してみてください。キーワードBOXには、世界/日本/分野に書き込んだ内容の中でも重要だと思うフレーズを入れてください。

 

例えば私が先と同じ“乳酸菌を主成分とした食品を販売する架空メーカー”の人間として書き込むならば、

◎世界の部分は【ボーダーレスの時代】【日本優位の時代】

◎日本の部分は【混沌・混乱の時代】【均質化の時代】

◎分野の部分は【明確なエビデンス(証拠)の時代】【安心第一の時代】

と書き入れてみます。

2枚目は「競合/強み弱み」シートです(以下図2)。

ライバルと自社とを分け、「資産」として把握した内容を対応させるように書き込んでいきます。キーワードBOXには、競合との比較の中でポイントとなるフレーズなどを書き込んでください。

3枚目は「顧客像」シートです(以下図3)。

ここには想定している顧客情報を記入していきます。年齢、性別、職業、収入、趣味嗜好、ライフスタイルなどです。イメージするペルソナは架空の人物像でかまいません。その架空の人物の個性や考え方、自社(商品・サービス)に対する思いについても書き込んでいってください。

これら3枚がコンセプトづくりのための土台となる第一次資料です。

 

 

[2]-3 ブレストでコンセプトづくりのためのヒントを集めよう

第一次資料3枚の記入が済んだら、チームでブレストを行い、コンセプトづくりのためのさらなるヒントを集めていきましょう。ブレストとは、一つのテーマに対して、複数の人が、自由に意見を出し合うことで、新しい発想や問題の解決方法を導き出す手法です。

 

ブレストを行う際のルールは“他人のアイデアや意見を否定しないこと”。逆にくだらないアイデアや意見でも大歓迎です。ここではとにかく発想を広げ、思いもよらなかったことや、新しい視点を探ることが重要です。

 

それでは次のものを用意し、ブレストを始めていきましょう。ICレコーダーで記録しておくと、改めて内容を振り返る時に便利なのでオススメです。

・第一次資料3枚

・A4コピー用紙たくさん

・太マジック

・テープ

・ポストイット

・ICレコーダー

 

 

[2]-4 質問を投げかけていこう

ブレストは1回90分、2回を限度に、その中でどんどん質問を投げかけ、その答えをA4用紙1枚に1つづつ書いて、壁に貼っていきます。

 

1つ目の質問は

「私たちのゴールはどこだろう?」

です。

 

自分たちはどうなりたいのか?顧客にとってどうありたいのか?何を提供し、どのように貢献したいのか?社会や世の中をどうしていきたいのか?みんなで目指すゴールイメージを固めていきましょう。

 

次の質問は

「私たちの強みは他にないのか?」

「私たちの弱みは他にないのか?」

です。

 

第一次資料の中の「競合/強み弱み」シートを見ながら答えてみましょう。ブレストの中で思いもよらない強みが見えてくるかもしれません。

 

続いての質問は

「なぜ私たちがそれ(事業/ビジネス)をやらねばならないのか?(必然性)」

です。

ここでは事業/ビジネスの価値観や必要性をメンバー間で出し合ってみます。自己実現のため、社会貢献のため、金銭・暮らしのため、などいろいろな答えが出てくると思います。

 

さらに

「それ(事業/ビジネス)はそもそも何を解決しているのか?」

「それ(事業/ビジネス)はどんな喜びをみんなにもたらすのだろう?」

人々や世の中のどんな課題や悩みを解決し、その結果、どう変えて行くのだろうかと、イメージを膨らませながら考えてみてください。

 

ここからは壁一面に貼られた今までの答えを前に、質問を投げかけていきます。

「本当にそこがゴール?

「本当にそれが強み?」

「本当にそれが弱み?」

「本当に私たちがやる必要がある?

「本能に人々のための解決策になっている?」

「本当に人々に喜びをもたらしている?」

と今までの答えを疑っていきます。必要だと思う答え以外は外していきましょう。そこに残ったものが自分たちの事業/ビジネスが行うことのすべてです。

 

次に残った答えを1枚のシートにまとめていきます。これが皆さんの「ゴールシート」になります(以下図4)。キーワードBOXには各項目で重要だと思ったキーワードを選んで書き入れておきましょう。

 

 

[2]-5 ポジショニングマップをつくろう

ポジショニングマップは自分たちの事業/商品/サービスの立ち位置がもっとも優位になる場所を示す図です。ポジショニングマップをつくることでライバルに勝てる、もしくはライバルのいない場所を探っていきます。

 

まずは「現在地シート」と「ゴールシート」を用意します。この中からゴールへ向かうことを前提に、自分たちの強みの中で最も違いがつくれそうな強みを2つ選び出します。

 

例えば、サッカーアルゼンチン代表のメッシ選手を例に強みを挙げてみましょう。メッシといえば世界No.1のサッカー選手と言っても過言ではないほど、あらゆるタイトルを何度も受賞したスタープレイヤーです。

 

その真骨頂といえば目の前に相手が何人いようとその間を割って突き進む“推進力”と“俊敏性”でしょうか。さらに2017-18シーズンまでで通算552ゴールをあげている“決定力”もその一つでしょう。また、自分の身長をはるかに凌ぐ大型ディフェンダーとの競り合いでも当たり負けしない“ボディバランス”もストロングポイントだといえます。

 

もう一人、ブラジル代表のネイマール選手の強みはといえば、まるでサーカスやダンサーかと見紛うような“ボールテクニック”と“ドリブル”、そして賛否両論ありますが、見るものを楽しませる “プレースタイル”が特長でしょう。

 

メッシ選手の場合のポジショニングマップは

 

一方、ネイマール選手のポジショニングマップは

となります。

 

ポジショニングマップはこのように自分たちの位置どりを強みの2軸の中で明確化していきます。ポイントは2軸の選び方です。必ず複数のマップをつくり、どれが最も自分たちの強みが発揮できるものなのか検討してみてください。

 

 

[2]-6 価値観マップをつくろう

ここでは「現在地」シートから「ポジショニングマップ」まで、計5枚のシートに記されたキーワードを元に、自分たちが大切にしている価値観を探っていきます。

 

それでは5枚のシートのキーワードを1つずつポストイットに書き写し、壁に貼っていきましょう。次に似た言葉同士のキーワードをグルーピングして貼り直していきましょう。最後にグループ関係なく、最も大事だと思えるキーワードを3〜5個選び出し、優先順位をつけて中心にまとめます。できあがったものが「価値観マップ」です。

 

これらのキーワードが自分たちのブランドにとっての「ゆずれない価値」です。「ゴールシート」と「ポジショニングマップ」、「価値観マップ」によって、ブランドの「理想の状態」、「行くべき(位置取るべき)場所」、「大切にすべき価値観」が見えてきたと思います。

 

 

■ 3 最後に自己規定をしよう

ブランドの「理想の状態」、「行くべき(位置取るべき)場所」、「大切にすべき価値観」が見えてきたら、そこを目指す現在の自分たちのブランドを自己規定しましょう。あなたのブランド、事業、商品、サービスは一言でいうとどんなものでしょうか?

 

私たちは「   」である。

 

ここでも「ポジショニングマップ」を見ながら、できるだけ短い、20文字くらいの言葉で表してください。メンバーとブレストで行っていくといいでしょう。日常業務のことは一旦忘れ、シートをもとに、自由に、大胆に、時に無責任に発想を広げながらしっくりくる言葉を探っていきます。

 

例えば、あなたの会社が“自然由来の天然成分を配合したサプリメントメーカー”だとします。成分にはしっかりとしたエビデンスがあり、安全性も保証できる。しかし、健康食品市場の盛り上がりの中で、差別化が難しく、また旧薬事法の表現規制の中でその良さをうまく伝えきれていないのが悩み。顧客の中にはさまざまな世代がおり、家族で愛用しているお客様も多い。

 

そこで3枚のシートを元に自己規定をすると

 

私たちは「家族の笑顔を守る健康食品メーカー」である。

私たちは「食の安全にこだわるお母さんたちのための健康食品メーカー」である。

 

と言った言葉で表現できるかもしれません。

 

はたまた、あなたの会社が“速乾性と防臭・抗菌機能に優れた日本産原料を使ったウェアブランド”だとします。素材の機能性と品質、デザイン性には革新があるものの、メガブランドのメジャー感に押され、売り上げは伸び悩んでいる。一度購入いただいた方のリピーターは多く、繰り返しデザインバリエーションやカラーバリエーションで買い足すお客様も多い。

 

この場合はこのように規定してみるかもしれません。

 

私たちは「毎日をアクティブにスポーティーに楽しむ大人のハイスペックウェアブランド」である。

私たちは「都会の街を、爽やかに、快適に、スマートに生きる人のウェアブランド」である。

 

あなたのブランドの自己規定はいかがでしょうか?「これだ!」と思えるコンセプトはできたでしょうか?以下のコンセプトチェックリストで確認してみてください。また、それぞれのシートの内容と矛盾がないかも併せてチェックしてください。

今回は以上です。唯一無二の優れたブランドコンセプトには、事業、商品、サービスすべてにおいてビジネスを嬉しい変化をもたらします。

「ブランドコンセプトなんて考えたこともなかった」

「コンセプトはあるけれど、機能している実感がない」

「コンセプトの必要性は感じるけど、つくり方がわからない」

このような方は、この機会にぜひブランドコンセプトづくりにトライしてみてください!