2018.12.16

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成功するコンセプトとは?法則、見極め方、作り方を事例で紹介


こんにちは!今回は、成功するコンセプトについてご紹介したいと思います。

 

これまでコンセプトの基本についてお話ししたり、コンセプトのつくり方についてお話ししたり、このブログでは度々「コンセプト」を取り上げてきました。

「コンセプト」の定義だとか役割といったものをなんとなくご理解いただけているのではないかと思います。

 

でも……

実際につくるとなると難しい!

つくってみたけど、これでいいの……?

 

そんな声が聞こえてきそうです。

 

すべての行動や目標の核となるようなフレーズを短くパン!と伝えなければならないコンセプト。つくることも、そしてつくったものが本当にそれでいいのか判断することも、やっぱり難しいと思います。

 

今回は、そんな「コンセプト」をよりつくりやすく、そして成功するいいコンセプトなのかどうかを判断しやすくするために、簡単なチェックポイントをお教えしていきたいと思います。

では、いってみましょう。

 

 

■ 1 成功するコンセプトの見分け方

世の中にあふれるコンセプトワード。

実際にあなたの会社でも、プロジェクトのコンセプトや、商品コンセプト、企業コンセプト…等々、探してみたらいろいろあるのではないでしょうか。

 

でも、つけたときに満足しちゃって、そのあとは何ていう言葉だったか忘れちゃったなぁ、なんてこともあると思います。

 

コンセプトは実際に機能しているものもあれば、そうでないものもあります。

なぜ機能しないのか、というと、そのコンセプトはいいコンセプトではないからです。

 

強く長くプロジェクトを牽引するようなコンセプト。

唯一無二の輝きを放つ商品コンセプト。

 

コンセプトをつけるのだったら、こんなふうに機能するいいコンセプト、成功するコンセプトをつけたくありませんか。

 

いいコンセプトとそうでないコンセプト、その見分け方を考えてみましょう。

 

 

[1]-1 成功するコンセプトの見分け方〈お題1〉

 

では、問題です。

「新・美肌革命」は成功するいいコンセプトでしょうか?

 

 

 

 

 

正解は、NO。

機能しないコンセプト、成功しないコンセプトです。

コンセプト風の、それらしい言葉が並んでいるだけの文章にすぎません。

 

「新」だし、「革命」だし、なんだか新しいことをやろうとしている感じが伝わってきて、コンセプトになっているんじゃないの?

 

そう思ってしまうかもしれません。でも、このコンセプトワードには、全く情報がありません。

「何かが新しい」ことは伝えていますが、それ以外は全く何も示していないのです。これでは何も言っていないのと同じ。コンセプトを掲げても掲げなくても、ほぼ何も変わりません。対お客樣はもちろん、これでは社内での統率さえ取れません。

 

米社会学者であるタルコット・パーソンズは、「コンセプトはサーチライト」と説明しています。

これはどういうことなのでしょうか。

 

サーチライトというのは視点のことであり、「コンセプト」はこれまでの古い常識で覆われていた暗闇の世界から新しい世界を照らし直すもの、なのです。

 

そう、コンセプトは新しい価値観を明確に照らし、行く道を示さなければなりません

 

その基準で考えると「新・美肌革命」は、ただ新しいことしか示しておらず、「今まで」を否定しただけにすぎません。つまり、真の意味で行く道を照らし出してはいないのです。その意味では、否定したはずの「今までの常識」と、まったく同じラインにしか立てていず、ただ足踏みしているだけの状態です。

 

コンセプトは、行く道を示さなければなりません。そうしないと、まず社内の人間が行動を起こすことができませんし、お客様だって今までと何が違うかわからず手に取ることもありません。

 

コンセプトは、新しい行き先を照らすもの、と改めて覚えてください。

 

 

[1]-2 成功するコンセプトの見分け方〈お題2〉

 

さて、成功するいいコンセプトの見極め方が少しわかってきたところでしょうか。

では第2問です。

 

 

 

これは、いいコンセプトです!

 

例えばダイソンの「吸引力の衰えないただ一つの掃除機」のように明確で尖ったコンセプトとは違いますし、なんか一見ほわっとしていて新しい世界を伝えていないような気もしますよね。

 

でも、ちゃんといいコンセプト、成功するコンセプトなんです。

動物園のコンセプトとして、いいコンセプトです。

 

そう、これは、北海道旭川市にある「行動展示」でも有名な「旭山動物園」のコンセプト。

 

「伝えるのは、命の輝き」ってとてもシンプルで、もっと気の利いた言葉じゃなければいけないんじゃないの…?と思われるかもしれませんが、それがコンセプトの役割を果たしていればシンプルでいいのです。むしろ、シンプルでパッとわかり、誰もが共感するコンセプトであればそれは優れたコンセプトなのです。

 

この「伝えるのは、命の輝き」というコンセプトは、これまでの動物園の常識を覆し、新しい動物園の形を提案したものだと思っています。

それでは、この旭山動物園の例をじっくり解説していきたいと思います。

 

 

■ 2 成功するコンセプトの例 その1【旭山動物園】

画像出典:朝日新聞デジタル

 

まずは、先ほどもご紹介した「旭山動物園」から。

 

目の前を豪快にダイブする北極グマ、空を飛ぶよう泳ぐペンギン、高さ17mもある空中運動場を悠然と渡っていくオラウータン。

ふつうの動物園では見ることができない姿を見られる「行動展示」で一躍有名になった旭山動物園。

 

でも以前は、存亡の危機に追いやられていたほどでした。寄生虫エキノコックスにより一時閉園を余儀なくされ、再開後もなかなか入場者数が伸びず、1996年には史上最低の26万人にまで減少。

 

暗中模索のさなかの1995年、園は動物園改革に乗り出したのでした。旭山動物園には、上野動物園のようにパンダもいなければ、どこの動物園にもいるようなごくふつうの動物しかいませんでした。

 

でも、当時の園長は、それを不利だと思わず、何か知恵を絞れば克服できるはずだと考えます。

 

動物たちの素晴らしさが伝わるには、どうしたらいいのか。

行く機会が限られる動物園という存在において、何度も足を運んでもらうためにはどうしたらいいのか。

 

そのように考え、飼育係一眼となってアイデアを出し合った結果、「行動展示」という今までになかった方法を編み出します

 

行動展示とは、その動物にとってもっとも特徴的な能力を発揮できる環境を整え、それをお客様にも見せてあげること

 

例えばペンギンは歩かせると遅いけれど、水中においては驚くほどのスピードでまるで空を飛んでいるように泳ぎます。

それを見せるために、施設内に水中トンネルをつくって、下からお客さんが空を飛ぶように泳ぐペンギンを眺められるようにしたのです。

 

これまではヨチヨチと陸を歩くペンギンを同じ視線で見ることしかなかった動物園の常識においては、画期的なことでした。

 

 

この「行動展示」という画期的な方法にたどり着いたのは、園長の思いでもあった「伝えるのは、命の輝き」というコンセプトがあったからです。

 

旭山動物園は、ただ動物の姿を見せる場だったこれまでの動物園を、動物が持っている命の輝きや生の素晴らしさを伝える場所に変えました。

この「伝えるのは、命の輝き」というコンセプトには、その力があります。

 

 

では、このコンセプトが、どのように新しい世界を照らし出したのか、図解してみましょう。

 
 
 
 

どうでしょうか?

なんでもないようなシンプルな言葉ですが、これだけ動物園の常識を変えるパワーのある言葉だったのです。

動物園というフィールドにおいて、短くシンプルで、新しい行き先を示した強いコンセプトだったと思います。

 

このコンセプトが迷いなく、新しい行き先を指し示していたからこそ、斬新な「行動展示」という方法も当たり前のように導かれたのです。

 

そして2004年の夏には、あの上野動物園を抜いて月間来場者数が日本一に。

旭山動物園の成功以降、日本にはユニークなコンセプトを持った魅力的な動物園が増えました。素晴らしいコンセプトを掲げると、企業はその業界のイノベーターとなりえるのです。

 

ちなみに私も以前、旭山動物園に行ったことがあるのですが、動物たちが生き生きしているのが印象的でした。

 

他の動物園では柵の中の動物を見ると「かわいそうだな」と感じることもありましたが、旭山動物園はそんな思いに駆られることもなく、動物たちが本当に楽しそうに見えました。

 

「あ、ゴリラだね!」「ほんとだねー」。「あ、こっちにキリンがいるよ」「キリンさんだー」

通常の動物園で交される会話は、こんなところではないでしょうか。

そこ見ているのは名前とその形。

 

つまり、普通の動物園で行っているのは、動物の名前当てゲームのようなものなのです。まさに、形態展示。

 

でも、旭山動物園は、「アザラシってこんな動きをするんだ」とか「北極熊の肉球ってこんなふうになってるんだ!」という動物たちが生きている瞬間の躍動感を垣間見られ、まさに「すごい」「素晴らしい」といった感想が出てくるのも頷けます。

来場者がすることは、単に名前と形を合わせるだけの作業ではありません。旭山動物園には驚きや感動があるのです。

 

 

旭山動物園は「行動展示」以外にも「共生」という方法にチャレンジしています。自然界では、1種類の動物だけが生きているわけではなく、さまざまな動物が共生して生きています。

 

それぞれの動物の生態に合わせた飼育場をつくり、可能な限り自然界と近い状態で共生させることを、動物園の中で再現しようとしているのです。

 

この「共生」という施策も、「伝えるのは、命の輝き」というコンセプトに沿ったもの。やはり、他の動物園ではなかなか見られない光景です。

 

そして、このコンセプトを掲げさまざまな施策を実践して行くのは容易ではありません。だからこそ、他と差別化でき、自分たちだけのコンセプトとなれるのです。

 

 

■ 3 成功するコンセプトの例  その2【スターバックス】

 

 

 

 

コンセプトの好例として、外せないのがスターバックス。スターバックスのコンセプトは「第三の場所」。

ご存知の方も多いとは思いますが、初めて耳にした方は一瞬、「え!?」ってなりますよね。

 

「世界中の美味しいコーヒーを世界のどこでも飲める」とか、「カスタマイズで自分だけのコーヒーを楽しめるカフェ」とか、カフェであればなんとなく思い浮かぶようなコンセプトではないんですね。

 

1971年にシアトルに開業したスターバックスは、もともとはごく普通のコーヒー屋さんでした。それを現在のような確固たる地位を築き上げたのが、「第三の場所(サードプレイス)」というコンセプトを立ち上げ、最近まで長らく会長を務めたハワード・シュルツ氏。

 

あらためて、「第三の場所」とは、どういうことなのでしょうか。

 

家庭(第一の場所)でもない、会社(第二の場所)でもない、第三の場所。家はホッとできる場所でありたいですが、家庭では家庭の役割があり、子供や配偶者にその責務を果たさなければなりません。

会社は会社でまた責任があり、常にプレッシャーとの闘いです。

 

この2つの往復だけでは疲弊してしまうところ、1日ほんの30分でもホッと一息をつける心地良い空間を提供しようとしたのがスターバックスなのです。

 

その心地良い空間をつくるために、コーヒーの豆からバリスタ、空間設計までを徹底して一流にこだわっています。彼は、著書『スターバックス成功物語』で以下のように語っています。

 

私たちの店は事実上、私たちの広告掲示板なのだ。客は店舗に足を踏み入れた瞬間から、スタバブランドの印象を持つ。ブランド構築にとって、私たちが作る雰囲気はコーヒーの質と同じく重要だ。全スタバ店舗は、顧客の視覚・触覚・聴覚・嗅覚・味覚の全ての品質を向上させるべく入念に設計されている。全ての感覚的なサインが、同じ高水準に達しなければならない。芸術作品や音楽、香り、外観が全て、コーヒーの味と同様『ここにあるものは全て一流』というメッセージを、潜在意識に訴えかけなければならない。

 

 

「第三の場所」というコンセプトに基づき、精緻に積み上げられたブランド設計があるから、私たちはスターバックスへ行くと優雅で豊かなひとりの時間を過ごせるのです。

 

「第三の場所」というコンセプトこそが、今スターバックスを不動の存在にしている重要な所以なのです。

 

 

では、このコンセプトが、どのように新しい世界を照らし出したのか、また図解してみますね。

 

 

コンセプトを考える際に、今いる自分の現在地などを考慮しながら、競合を設定したりしますが、スターバックスがコンセプト設計したときに競合にしたのは、コーヒー屋さんではないはずです。

 

ホテルだったり、スパだったり、もしかしたらフィットネスジムだったり、カルチャースクールだったかもしれません。

 

コーヒーを売るからといって、コーヒー屋さんだけを見ていたのではこのようなコンセプトは出てこなかったでしょう。

 

例えば「(カスタマイズで)自分だけのコーヒーを楽しめるカフェ」というコンセプトにしていたら、スターバックスにあるあの居心地のいいソファや、ウッディでぬくもりのある穏やかな空気の流れるあの空間設計にはなっていなかったはずです。

 

もし「(カスタマイズで)自分だけのコーヒーを楽しめるカフェ」というコンセプト(←ちなみに、このコンセプトはあまりよくありません)だった場合、どんなお店になっていたでしょうか。

実際に、スターバックスはメニュー選択時に細かくカスタマイズでき、自分だけのコーヒーをつくれますね。

 

 

このコンセプトだった場合、どんなお店になっていたか予測してみましょう。

 

 

一つ目は、POPな空間デザインの客層もお客さんも20代女性を中心とした流行に敏感な層。長く愛されるというよりは、話題性のあるポップアップショップのような雰囲気のコーヒーショップ。

 

二つ目の可能性としては、コーヒー好きな純喫茶に親しんだ世代がターゲットの、渋く落ち着いたお店。多数のお店を出店するというよりは、チェーン店でも各都市に1店舗程度の展開になりそうです。

 

 

どちらにしても、今のようなスターバックスの成功はなかったでしょう。

 

 

そうです。いいコンセプトをつくるには、自分の業種業態などの枠を飛び出して自由に考えてみることです。

 

扱っているモノだけに囚われず、その先に見たいビジョンはなんなのか。何をミッションとしているのか。一旦商品から離れて、そんなところまで考えたコンセプトが真のコンセプトとなるのです。

 

なんていうのは理想ですし、枠を飛び出せ」なんて言われても難しい…。

そうですよね、そんな気持ちもわかります。

 

枠の中にいてぐるぐるしていると、その枠がどこにあるかなんてわかりません。

そんなときのちょっとヒントを。

 

コンセプトを立てるとき、自分発信になってしまいがちですが、お客様ならどう考えるかーまずは、顧客の視点で自分たちを規定する「他己規定」をしてみてください。スターバックスの「第三の場所」も、こうした視点で生まれているはずです。

 

 

■ 4 商品コンセプトと企業コンセプトの違い

旭山動物園とスターバックス、いいコンセプトの例としてこの2つを掘り下げてご紹介しましたが、この2つは企業コンセプトです。

 

ここで一旦、商品(またはサービス)コンセプトと企業コンセプトの特徴について少し簡単にお話ししておきたいと思います。

 

 

旭山動物園は「伝えるのは、命の輝き」。

スターバックスは「サードプレイス」。

 

これら企業コンセプトに対して、先に少し取り上げたダイソンの「吸引力が変わらないただ一つの掃除機」は、商品コンセプトです。

 

 

偽物のコンセプトとして例に取り上げた「新・美肌革命」は、商品コンセプトにもなるし、スキンケア商品を扱っている会社の企業コンセプトにもなると思います。

どちらにでもいけるコンセプトですね。

 

 

このように並べると、なんとなくお気づきかもしれませんが、企業コンセプトでは伝えている内容は少し広くなりやすく(少し抽象度が増す)、商品コンセプトでは企業コンセプトよりも伝えている内容は具体的になりやすいという傾向があります

 

それもそうですよね。

 

基本的に企業はさまざまな商品やサービスを抱えているわけで、それらを抱え込んでより上位概念を伝える広い内容になります

商品は、その商品だけのことなので具体化しやすくなります

 

企業コンセプト、商品コンセプトにはそれそれの特性がありますが、「古い世界の常識を覆して、新しい世界を指し示す」ということには変わりありません。

 

企業コンセプトであっても、商品コンセプトであっても、「新しい行き先を示すもの」であるかをいいコンセプトであるかどうかの指標にしてみてください

 

■ 5 成功するコンセプトが持っている【4つの働き

 

「古い世界の常識を覆して、新しい世界を指し示す」ことができているかどうか、これがいいコンセプトの指標となります。

 

ただ、これだけでは自分の判断に自信が持てない…ということもあるかもしれません。さらに詳細な判断基準が欲しいという方のために、よいコンセプトが持っている「4つの働き」をご紹介します。

 

これは、コンセプトが持つ働きとして、ブランド・コンサルタントの江上隆夫著『無印良品のアレは決して安くないのに、なぜ飛ぶように売れるのか?』で紹介されているもので、そちらから引用しています。

 

もう少し詳しく知りたいという方はこの本がオススメです。

コンセプトの作り方から使い方までがみっちり載っていて、まさにコンセプトをつくりたいという方のためにピッタリの本です。

 

 

  • 力を束ねる

明確なコンセプトは、力を1点に集中させることができます。

戸外で虫眼鏡のレンズを新聞紙などに当てると、太陽の光を集めて新聞紙が燃える、という科学の遊びをしたことはありませんか。

 

この虫眼鏡のレンズの役割が「コンセプト」です。行き先ややることを明確に示せば、一つひとつの力は弱くても1点に集中することでものすごい力を発揮することができます。

 

例えば、1960年池田勇人内閣のもとで掲げられたコンセプトでありスローガンともなった「国民所得倍増計画」。

 

すべての国民水準を明大幅に引き上げると宣言したのと同時に、国民一人ひとりに明確な目標と希望を与えました。

 

その結果、企業や国民のモチベーションを引き出し、目標より3年前倒しの1967年までに所得倍増を実演させたのです。

 

よいコンセプトは「力を束ねる」働きがあるのです。

拡散しているように見える太陽の光を1点に集めるためにはどんな言葉を掲げたらよいのでしょうか。

 

 

 

  • 在り方を決める

 

スターバックスの「サードプレイス(第三の場所)」のように、自分たちの在り方を決めること。

世の中でどのような存在のなのか、どのように存在すべきなのかを明確にできているのがいいコンセプトです。

 

スターバックスの「サードプレイス」は、どういう在り方ならお客様に愛されるかを考えて生み出された言葉です。家庭でもなく職場でもない、安心してゆったりと過ごせる場所なら愛されると考え、自らが在り方を規定しました。

 

いいコンセプトは、ビジネスや組織の在り方を決めます。そして、どこを目指せばいいのかを示唆してくれるものです。

 

 

 

 

  • 行動を指示する

 

例えば、まだ男性優位だった20世紀初頭において、ココ・シャネルは「女性の解放」という哲学を持っていました。

 

それまでの女性の服はコルセットでウエスト部分を締め上げられていたり、引きずるような重々しい裾のスカートだったり、窮屈で着心地がいいとは言えませんでした。

女性のことを考えた服というよりは、男性に従順であることを示すような男性目線での服だったのです。

 

シャネルは「女性の解放」という哲学(コンセプト)のもと、コルセットを捨て去り、機能性に優れたジャージー素材を使い、スカートも動きやすいように短くしました。

旧来型の価値観を壊し、「女性による女性のための服」をつくったのです。

 

その後も、当時主流だったクラッチバックにチェーンをつけることで、女性の両手を自由にしたり、オフィスでもパーティでも切られるシックなシャネルスーツを開発して女性の社会進出を後押ししたりします。

 

シャネルの掲げた「女性の解放」という哲学(コンセプト)は、そのまま彼女やその周りの人間の行動を指示し、本当に世の中の女性の服を自由にし、女性の自立まで促しました

今やシャネルはいちブランドではありません。歴史や文化を変えた、女性解放のシンボルともなっています。

 

よいコンセプトは必ず行動を指示し、さらには行動を喚起します。つまり、「未来への行動指示書」となっているのです。

 

 

 

  • 価値を最大化する

 

コンセプトは「力を束ね」「在り方を決め」「行動を指示」します。それは、その商品や企業、ブランドが持っている価値を最大化して、自身を輝かせるためつまり、コンセプトには「価値を最大化」する働きがあるのです。

 

コンセプトの最終的な使命は、企業や商品が持つポテンシャルをすべて引き出し、世の中に対してそのブランドの価値を最大化すること。

 

価値を最大化するとは平たくいえば、「関わる人に自分が可能な限りの幸福(利益)をもたらす」ということ。

これがコンセプトの最も大切な働きです。

 

 

では、おさらいしてみたいと思います。

 

 

 

いいコンセプトは、これらの働きが含まれているものです。

ぜひチェックしてみてくださいね。

 

 

■ 6 まとめ

今回は、成功するコンセプト、機能するいいコンセプトについてお話ししてきました。いいコンセプトとそうでないコンセプトの見極め方にについて、なんとなくわかってきたのではないかと思います。

 

それではおさらいしてみましょう。

いいコンセプトには4つの働きがあります。検討しているコンセプトにこれらがあるかをぜひ確認をしてください。これらの働きがあるものがいいコンセプトです。

 

1、力を束ねる

2、在り方を決める

3、行動を指示する

4、(その商品や企業の)価値を最大化する

 

 

そしてこれらの働きが揃ってコンセプトは「古い世界の常識を覆して、新しい世界を指し示す」ことができるのです。

 

4つの働きがあるコンセプトかどうかをチェックした後は、最後にそのコンセプトが「古い常識を覆して、新しい世界を指し示している」ものかどうかをチェックしてみてください。

 

 

いいコンセプトは、あなたの会社や商品の在り方を決め、スタッフやその周りの人間の力を束ね、常に次の行動を示唆してくれます。

 

その結果、あなたの会社や商品の価値が最大限に輝くと同時に、今まで誰もやってこなかった新しい世界へと人々を導くものであるのです。

 

そうです。あなたの会社にとっても、会社で働くスタッフにとっても、そしてその商品やサービスを使うお客さんにとっても皆ハッピーで素晴らしいことなのです。

 

いい未来はいいコンセプトが変えていく、といっても過言ではありません。コンセプトって、たった数文字なのにすごいものだと思いませんか。

 

それでは、今回はこのへんで。ありがとうございました!