2019.01.11
| Branding
ブランディングとは?マーケティングとは?その違いを完全解説。
こんにちは。
突然ですが、ブランディングとマーケティングの違いってわかりますか?
それぞれを一言で説明することも難しいし、それぞれを理解していてもその違いを説明することができない……そんな方が多いのではないでしょうか。
今回の記事では、そのへんのところを解説していきたいと思います。
目次
■ 1 ブランディングとマーケティング?
[1]-1 ブランド、ブランディングの定義とは?
[1]-2 マーケティングの定義とは?
■ 2 ブランディングを紐解けば、その違いが見えてくる!
[2]-1 ブランドの歴史
[2]-2 ブランディングの概念の変遷
[2]-3 ブランディングとマーケティングの関係
■ 3 結論! ブランディングとマーケティングの違いを定義する
■ 4 実践における、ブランディングとマーケティングの進め方
■ 5 まとめ
■ 1 ブランディングとマーケティング?
ブランディングって何?
マーケティングって何?
ふだん触れていてなんとなく理解したつもりになっているこれらの定義。
まずは、そこからさっそく解説していきましょう。
[1]-1 ブランド、ブランディングの定義とは?
まず、ブランドについて整理してみましょう。
ブランドとは何なのでしょうか。
アメリカ・マーケティング協会によると
とあります。
なるほど。なんとなくわかったような感じはあります。
すごく簡単にまとめると、
他と差別化させるための記号(ネーミング、シンボル、デザイン)といった感じでしょうか。
でも、今の「ブランド」を示すには、少し足りないような感じもします。
ちなみに、ブランドやブランディングについて、弊社はこのように定義しています。
記号的要素も大事だけど、「ブランド」をブランドたらしめているのは、「体験」も大事な要素。
受け手の記憶の中にある、その商品やサービスのよい思い出やイメージができたら、その人にとっての「ブランド」になった、ということ。
100人いたら、思い描くブランドの形はそれぞれ。
ある商品について「いいな」と思っている人が複数いて、それらのイメージを総称して「ブランド」と言っているのに過ぎないのです。
言い換えれば、
生活者がその商品になんらかのよい感情をもって、「指名買い」される状態になることがブランドとも言えます。
だから、作り手である企業が、いい思い出やいい感情を持って「指名買い」してもらえるようにその記憶のマネージメントをしなければいけないというわけです。
この作業が、ブランディングになります。
[1]-2 マーケティングの定義とは?
では、マーケティングの定義をみてみたいと思います。
マーケティング研究の第一人者であるフィリップ・コトラーは、以下のように定義しています。
ニーズとは、生活者を取り巻く状況において足りないものがあり、それが必要とされる状態であること。
ウォンツとは、ニーズよりもさらに具体化された希望、欲求になります。
このニーズとウォンツを満たすものが製品(モノ、サービス、場所)です。
例えば、「お腹が空いた」というのが「ニーズ」、「おにぎりが食べたい」というより具体的な要求が「ウォンツ」。
それら買い手に対して、売り手が例えば「鮭おにぎり」「焼きおにぎり」などを提供するとしたら、それが製品になります。
つまり、買い手が持つニーズやウォンツと、売り手が持つ製品との価値の交換がマーケティングということになります。
では、別の定義もみてみましょう。
日本マーケティング協会の定義によると
コトラーもマーケティング協会の定義も、教科書的で実践という意味ではなかなか腑に落ちにくいかもしれませんね。
そういう意味でいうと、経営学者ピーター・ドラッガーが著書の中で実戦に即してわかりやすく噛み砕いています。
つまり、売り手がプッシュしなくても、自然と買いたくなる状態をつくるということ。
マーケティングとは、生活者のニーズやウォンツを汲み取った商品開発、プロモーション戦略、流通など一連の流れにおいて売れる仕組みをつくるということです。
■ 2 ブランディングを紐解くと、その違いが見えてくる!
ブランドの定義、マーケティングの定義を見てきました。
それぞれがどんなものなのかわかるようになってきましたね。
でも、「ブランディングとマーケティングの違いを説明してください」と言われたら、まだ難しいですよね。
どうしてでしょうか。
それは、なにはともあれ「ブランド」や「ブランディング」の理解が難しいのです。
まず、ブランドの概念自体が抽象的であること。
その概念や定義も時代によって変わっていること。
そして、ブランドの解釈や定義、戦略といったものは人それぞれであること。
こんなことから、ブランドやブランディングというものは、捉えどころがなくて、理解しずらく、説明しずらいのです。
だから抽象概念がなく理解しやすいマーケティングの定義に対して、ブランディングがどういう関係性なのか捉えづらいのです。
マーケティングも常に進化し新しい戦略が生み出されていますが、定義は変わりません。「(商品開発やプロモーションなどでの)売れる仕組みづくり」です。
ブランドをきちんと捉えるために、歴史を少しだけ追って見たいと思います。時代に合わせた概念や定義の違いも理解できれば、きっと腑に落ちるはずです。
[2]-1 ブランドの歴史
経営史の専門家テドロウ氏によれば、ブランドの登場は19世紀末。
輸送や通信などのインフラが整備されたことによって、地域毎だった市場が全国市場になり、標準化された製品が大量に流通するようになりました。
そのときの手段がブランドだったといいます。
標準化した包装製品に名前をつけることができるようになり、名前がついたので広告することができるようになり、広告の結果、名前は単なる名前以上のものになった、すなわちブランドになったということです。
このように、ブランドの歴史は意外と古いのですが、ブランディングの研究や議論が本格的に進むのは1950年以降の話になります。
[2]-2 ブランディングの概念の変遷
ブランディングの研究が進むに従って、その認識や概念も変わってきています。マーケティングの専門家であり、学習院大学教授の青木幸弘氏は、その変遷をこのようにまとめています。
ブランディングの研究が進むようになった1950年以降、わずか半世紀でその認識は大きく変わってきています。
始めはマーケティングの一部であり、手段としてのブランドだったのが、1985年にはマーケティングの結果としてブランドになったという考え方になります。
そして、1996年からはブランドがさらに重要視され、マーケティングの起点として捉えられるようになります。
このように、ブランドの概念が大きく変化していることが、理解を難しくしている理由の一つだったのです。
[2]-3 ブランディングとマーケティングの関係
ブランディングとマーケティングの関係について、中央大学ビジネススクール教授である田中洋氏は、著書『ブランド戦略全書』において以下のように語っています。
ブランドは、1990年代から2010年代まで四半世紀にわたって、研究と実務の両面でマーケティングの中心的課題であり続けてきた。
その本質的な理由は、ブランドという存在がなければ、マーケティングにおける価値の交換もありえないからだ。ブランドがあってこそはじめて持続的なマーケティング活動が成り立つのである。
そして、さらにこのようにも語っています。
マーケティングとは売り手と買い手の交換行為であり、持続的な関係性の形成である。ブランドという視点がなければ、交換はすべて買い手が売り手の提供をする価値を事前に了解でき、それに見合った価格を支払うというごく単純な活動になってしまう。買い手は商品の品質を事前に見分けることができない、という近代的な交換関係を前提としてブランドは成立しているのである。
このように、ブランディングとマーケティングは現在の市場において経営の両輪をなす重要な役割を担っているといえます。
そして今日、マーケティングにおいてブランディングは欠かすことのできない視点なのです。
■ 3 結論!ブランディングとマーケティングの違いを定義する
ブランディングとマーケティングが、ぞれぞれの役割を担う上でお互いに大事な存在であることはわかりました。
でも、それぞれの違いは?と聞かれたら、まだ説明しづらいと思います。
ブランディングとマーケティングについて、弊社ココカラはこのように定義しています。
マーケティングは、売れる仕組みづくり。
ブランディングは、愛される仕組みづくり。
どうですか?なるほど、と納得感ありませんか。
他にも、2者にはこんな違いがあります。
マーケティングの目標は、買ってもらうこと(=selling)。
ブランディングの目標は、好きになってもらうこと(=loving)。
マーケティングが提供するのは、解決。
ブランドが提供するのは、体験。
腑に落ちた感じ、出てきたでしょうか。
でも、実際に実践に即して考えていくと、3C分析だったり、ポジショニングだったり、やることとしてはブランディングとマーケティングは重なり合っているところも多いものです。
実際、マーケティングの本を読んでいくと、その一部でブランディングが紹介されていることが多かったりします。
そういう意味で、ブランディングはマーケティングの一部という見方もできます。
でも、マーケティングは売れる仕組みづくりであるのに対し、ブランディングは愛される仕組みづくりと考えると、その性質はまったく違ったものであるとも言えます。
で、結局ブランディングはマーケティングと違うのでしょうか?
昔はマーケティングの一部であった、と思います。
その頃は、「ブランディングっていうのはマーケティングのことだよ。マーケティングのいち手法。」と言って問題はなかったと思います。
でも今は、それでは収まらなくなってきています。
マーケティングとブランディングがそれぞれ発展した結果、ブランディングはマーケティングの上位概念として昇華されて今日に至る、というのが私の考えです。
■ 4 実践における、ブランディングとマーケティングの進め方
定義的を理解し、さらにブランディングとマーケティングの棲み分けもなんとなくわかってきましたね。
では、実践に即して考えた場合、ブランディングとマーケティングはどう取り扱ったらいいのでしょうか。
まず、ブランディングを起点にすること。
そして、常にブランディングを意識していること。
この2つがポイントです。
ブランディングの視点で商品設計をし、ブランディングの視点を常に持ちながら、マーケティングの視点を踏まえて戦略を立て実行していく。
そして、ブランディングの視点で顧客との関係を見直して、戦略を練り直す。
実践に即したブランディングとマーケティングの関係をザクッと言うと、こんな感じでしょうか。
ちなみにマーケティングのエリート集団であるP&Gのマーケティング部門では「ブランドマネジメント」と「人材育成」を2本柱としているそうです。
そして、ブランドマネージャーは利益に責任を持つことで一貫したブランディングを行い、ブランドを中心に各組織が協力できるような体制になっているといいます。
マーケティングを極めようと思ったら、ブランディングは欠かせないものであることがわかりますよね。やっぱり、P&Gでもマーケティングの起点にブランディングの視点があります。
■ 5 まとめ
今回は、ブランディングとマーケティングそれぞれの定義、そしてその違いをじっくり解説してきました。
この記事を読んだあなたなら、「ブランディングとマーケティングの違い、教えて」と不意に言われたとしても(そんな状況なかなかないかもしれませんが)、もう大丈夫でしょう。
マーケティングは、売れる仕組みづくり。
ブランディングは、愛される仕組みづくり。
ポイントは、とりあえずここだけ。
そして、特にブランディングは研究が進むにつれ、その概念や定義が進化しているということ。
マーケティングとブランディングがそれぞれ発展した結果、ブランディングはマーケティングの上位概念として昇華されているということ。
だから実践では、
まず、ブランディングを起点にすること。
そして、常にブランディングを意識していること。
を念頭においてみてください。
ブランディングの視点で商品設計をし、ブランディングの視点を常に持ちながら、マーケティングの視点を踏まえて戦略を立て実行していく。
そして、ブランディングの視点で顧客との関係を見直して、戦略を練り直す。
このサイクルで動かしていきます。
進化するブランディング、マーケティングにおいていかれないよう、常に勉強していかなきゃですね。