2018.11.27

| Branding

ブランドとロゴの関係と働きを徹底解説


目次

 

ブランドのロゴが持つ、単なる象徴・記号以上の意味と価値と働き

 

あなたはブランドロゴと聞いて、何を想像しますか?日常的に利用するお店のロゴでしょうか?それともお気に入りのファッションブランドや憧れの外国車ブランドでしょうか?

 

知り合い10人に聞けば、おそらく10通りの答えが出てくると思います。それもそのはず、私たちの身の回りには無数のブランドと共にブランドのロゴがあふれています。

 

ブランドロゴとはブランドの視覚的象徴・記号だと言えます。しかし、マーケティングにおいては、単なる象徴・記号以上の意味と価値と働きがあります。

今回はこの世の中に無数にあるブランドとロゴの関係について解説していきます。


 

事実<価格<ブランドの価値=ロゴ

 

 

例えば、あなたは喉が渇いて飲み物を買おうとコンビニに入ったとします。ドリンクコーナーには、あらゆるメーカーのあらゆる種類の飲み物があります。お茶か炭酸飲料どちらにするかはその時の気分で決められると思いますが、お茶の中でもどれにするかはブランドロゴの働きが大きく関わってきます。

 

「お茶を買おう!」と思っても、そのペットボトルにブランドロゴがなければ、さまざまな種類のお茶の中から1つを選ぶのはひと苦労ですよね。このようにブランドロゴは視覚的にあなたの情報処理を簡略化し、意思決定をサポートしてくれています。

 

逆を言えば、それぞれのお茶に特徴(事実)があったとしても、ブランドに対するイメージがポジティブなもの(CMの印象や起用タレント、周りの評判)であれば、ブランドロゴ1つでその他のお茶よりも良い印象を抱き、購入にも有利に働くでしょう。事実だけでなく、価格差においても同様のことが言えると思います。

 

実は人は無意識の内にブランドロゴによってこのような情報処理を行い、事実や価格差といった理性的な判断基準とは別に選択肢を絞り込んでいるんですね。その効果はありとあらゆるところにブランドがあふれ、情報にまみれた現代社会ならなおさらです。まさに、ブランドのロゴには事実や価格におけるデメリットを補って余りあるだけの価値があると言っても過言ではありません。

[1]-1 ブランドのロゴは価値を識別するサイン(識別記号)

 

ブランドのロゴは商品をはじめ、企業やサービス、団体などに対する価値を識別するサイン(識別記号)として働きます。顧客が商品ブランドなどを見たときに形、色、文字など他の商品とは異なる存在だと気付き、記憶するための存在です。そしてさらに、人それぞれその商品ブランドに抱く価値も合わせて連想します。

 

スポーツ・アウトドアブランドが好きな私の場合、「NIKE」「THE NORTH FACE」のロゴを見たときは、単なるブランドの記号という意味を超えて、[洗練されたデザイン][ハイスペック][最先端のテクノロジー]といった価値も合わせてイメージします。

 

旅先でのホテル選びの際、ヒルトンホテルの【H】やシェラトンホテルの【S】、帝国ホテルの【ライオンと舵輪のシンボル】、パレスホテルの【FIVE DOTS】を見ると無意識の内に[高級感][ホスピタリティ][格式][歴史・伝統]と言ったイメージを連想します。転じて「◯◯ホテル監修」といった商品にも自然と同様のイメージを抱きます。


識別記号としてのブランドロゴと知覚価値(イメージや体験にもとづく価値)としてのブランドイメージが合わさることで、人はそのブランドを連想しやすくなり、選びやすくなるんですね。強いブランドであればあるほど、ブランドロゴが「優位性」や「独自性」の保証書のように記憶の中で鮮明に存在するものです。

 

よく言われていることですが、「ブランド=ロゴ」では決してありません。私たちが抱くブランドの価値(イメージや体験)とロゴが相まってこそ、ブランドは他と差別化され、共感され、愛されながら立体的に記憶されていくものなのです。

 

[1]-2 ブランドのロゴはどう認識される?

 

突然ですが、ここで三択です。人はブランドのロゴを、以下のいずれによって特定のロゴとして認識しているのでしょうか?

①文字 ②色 ③形

 

正解は②と③です。ちょっとずるいかもしれませんが、②色と③形の2つによって認識しています。東京メトロの各路線のロゴは色と形をシンプルにシンボル化しています。公共交通機関である特性上、ユニバーサルデザインとしても好例だと言えます。

 

①文字であれば最も具体的な情報として、認識・差別化しやすいようにも思いますが、人はロゴをその造形と配色で認識し、文字は読まれていないんですね。

 

世界中の誰もが知るNIKEのロゴ「swoosh」。このシンボルはギリシャ神話の勝利の女神「ニケ(Nike)」に翼をモチーフにデザインされたものですが、一貫性・汎用度があり、その象徴性の高さゆえに、1995年からブランド名や商品名、社名など「デザインされた文字」であるロゴタイプは削除されています。もはや「NIKE」の文字は必要ないほど、ブランドロゴのパワーが絶大である証だと言えます。

 

大切なのは「ブランドの理念を体現し、顧客と密接にコミュニケーションできるかどうか」

 

ここまでは消費者とのコンタクトポイントとしてのブランドロゴについて話してきました。ここからは企業や商品側から見た、表現のアウトプットとしてのブランドロゴについて触れていきます。

 

ブランドを管理する立場(ブランドマネージャー)やブランドを育てていきたいオーナーにとって、ブランドロゴで重要なことは何でしょうか?

 

視認性、他にはないユニークネス、美しいデザインなど、その要素はたくさんあると思います。しかし、一番大切なのは「ブランドの理念を体現し、顧客と密接にコミュニケーションできるかどうか」です。

 

そのためには、ロゴ化する前の企業ないしは商品・サービスのアイデンティティ(コンセプト、ミッション、ビジョン)を明確化させておくことが何よりも重要です。

 

もしもアイデンティティ無きブランドロゴならば、格好よかったり、綺麗だったり、可愛かったり、親近感が湧くようなものだったとしても、時間とともにそのイメージは消費・忘却されてしまいます。記憶にないものはこの世の中に存在しないのと同じです。 

 

[2]-1 ブランドのロゴをリニューアルするメリット

 

優れたブランドのロゴは、色と形ただそれだけで顧客に語りかけ、記憶に残り、継続的なコミュニケーションを図ります。そして、さらなる記憶と体験をもたらしてくれるのです。

 

企業の事業継続や商品のライフサイクルにおいては、大きな変革期が訪れることもしばしばですが、このようなしかるべきタイミングでブランドのロゴをリニューアルするケースも少なくありません。目的はもちろん顧客との間で、将来を見据えた新たなメッセージや姿勢を示し、コミュニケーションを図ることに他なりません。

[2]-2 apple」のロゴ

 

こちらは「apple」のロゴですが、1998年まで使われていたロゴは印象の異なるものでした。皆さんは思い出せますか?



1998年まで21年の間は以下のようなレインボーストライプのロゴが使われおり、これはウォズニアックが開発したapple Ⅱの新しいカラー表示のスクリーンを宣伝する目的で選ばれたものでした。



1997年にappleに復帰したジョブズは新たなMac OSをはじめ、半透明な筐体を採用したiMacなど革新的な製品・技術を発表していきます。そうした中で、よりシンプルで汎用的な現在のロゴへとシフトし、iPod、iPhone、iPadに代表されるようなスタイリッシュなシルエットになったのです。

 

現在のロゴに通ずるシンプルなappleロゴは、ジョブズが復帰した際に、黒のボディに白抜きの大きなappleロゴを大胆にあしらったPowerBook G3を発表したことに始まります。

 

もしかしたらジョブズはappleがこの先パーソナルコンピューターのみならず、家庭用・個人用機器の領域、応用性、利便性を広げる画期的な製品を数多く手がける世紀のグローバルカンパニーへと成長を遂げることを確信し、当時からそのすべてを網羅できるロゴを想像していたのかもしれませんね。

 

 

[2]-3  全く新しい市場には新たなロゴを開発する


またまた突然ですが問題です。このロゴは何のロゴだかわかりますか?皆さんも必ず一度は利用したことのある、とある店舗のロゴです。

 

実はこれ、国内で1,209店舗*を運営する牛丼チェーン店の吉野家のロゴです。そう言ってもピンとこない方は多いはず。それもそのはず、このロゴはアメリカの吉野家101店舗で使われているロゴなんですね。

*2018年10月時点

 

従来の「牛+どんぶり+しめ縄」のロゴでは、そのモチーフにまったく馴染みのないアメリカにおいて、コミュニケーションが困難だと考えたロゴデザイナーは、既存ロゴに加え、シチュエーション別で使われるこのロゴを考案しました。今後の海外での店舗数拡大に向けた、コミュニケーション戦略の1つとして、店舗外で飲むテイクアウト用のカップや名刺の表など、人目に触れる時間が限られているツールには、この一目で頭に残りやすいレターマークのアメリカ版新ロゴが用いられています。

 

重要なのはそのロゴの背景にあるブランドのアイデンティティ

繰り返しになりますが、「ブランド=ロゴ」ではありません。もちろん「ブランディング=ロゴ制作」ということでもありません。ブランドのロゴはブランドと顧客とのコミュニケーションのために存在するものです。色や形、美しさやスタイリッシュさといったデザイン性も重要ですが、もっと重要なのはそのロゴの背景にあるブランドのアイデンティティです。

 

アイデンティティとは、ざっくり言えば、企業にせよ商品にせよサービスにせよ「顧客に対し、そのブランドが何を思い、どう行動し、世の中をどうしていきたいのか?未来にどう在りたいのか?」ということです。

 

表面的なクリエイティブとは異なり、ブランドロゴの働きは潜在的なものです。しかし、優れたブランドのロゴは、ブランドの代弁者となり継続的に顧客とコミュニケーションをしていきます。広告、PR、CRM、IR、CSVなど顧客とのコミュニケーション戦略は多岐にわたりますが、ブランドのロゴはそのすべてにおいて重要な役割を持つ視覚言語なのです。